一昨日母と行った古着屋にもう一度一人で行く。目星をつけていた両肩に結べるリボン紐がついているエンジのワンピースを探し回ったが見つからない。店内は通路ごとにデニム・ワンピース・小物などと完璧に整頓されておりなぜか古い漫画がびっしり並べられている棚もあった。帽子のラックに私の好きなファーの帽子がいくつかあったので(表はグレーのファーで裏地は緑の花柄、オレンジなんていう珍しいものも)眺めていると見知らぬ老婆から「これは去年もありましたかね,」と声をかけられた。私は不快感こそ覚えなかったもののまともな会話ができる相手ではないと判断し曖昧に返した。連れらしき女性が慌てて「すみません」とへこへこ謝りながら老婆を連れ去った。
店を三周ほどしていよいよ店員に尋ねてみようかと考えたところで店員の方から声をかけてきた。「もしかしてこの間のワンピースお探しですか?」一昨日私が試着室で母と買うか買うまいかのやりとりをしていたのを覚えていたのだろう。細身で小柄の店員はきつめのメイクでそっけない口調にそっけない表情だったがどことなく気さくさを感じた。私がそうだと答えると「あれねーもう出ちゃったんですよぉ」と答えてくれた。私はこういうときの諦めは良い質なので「縁がなかったってことですかね」と言った(アクセサリー棚にかかっている,少し前に流行った靴の形のトップがついたネックレスを弄びながら。そのパンプス形のトップは珍しく大ぶりで,本物の淡いブルーのデニムが貼られているところが気に入ったが,安全面への配慮なのかヒールの部分が造られていないことが残念だった)。言ってから店員にこの物言いはよくなかったのではと思ったが彼女は気に留めない様子で服を畳みながら「縁がなかったってことですよぉ」と言った。



サービスエリア風の駐車場に出て父の車があるのを確認してから喫煙所に行った。喫煙所は二ヶ所あり車から近いほうには若い男の子のグループがたむろしていた。私はそれぞれの場所で一本ずつ煙草を吸った。



ファッションビルの地下2階と3階はアーティストやイラストレーターの専門グッズを扱うショップで占められている。現在秋葉原とのコラボレーションをやっており各々のアーティストが手掛けた最近のアニメのグッズが売っているという。私が階段を下ろうとするとヨレヨレの淡色のブラウスとスカートにヨレヨレの束ね髪、腕には薄汚れた人形を抱いているという如何にも“ヤバそう”な女性が前を歩いていたが気にしないようにして足を進めた。階段を下った先はほぼ行き止まりで二つのショップしかなく右手に折れた先に人気ショップなどがあるらしい。女性は二つのショップに目もくれずに右に曲がったが私は端から二番目のショップに目がいってしまった。「まこ」という女性イラストレーターのショップらしいがその絵は小学生でももう少しマシだろうというくらいに下手である。アニメのとコラボなのであろう色紙がいくつも並んでいるが全て“顔を左斜め上に向けたバストアップ”という同じ構図だしそもそも何のアニメなのか全くわからない。構図が同じなのはさすがに意図的なものなのだろうがあまりに下手すぎてそれしか描けないように見えてしまう。ショップには「まこ」本人らしき小柄な女性が立っており,色と柄を絶妙に組み合わせたファッションはさすがだと素直に感じたが目がぎょろぎょろと落ち着かないせいで挙動不審に見えてしまう。コラボと関係ない常設品は「東京で虫をさがそう」「花をさがそう」「貝がらをあつめよう」といったタイトルのメモ帳のような冊子で(メモ帳かもしれない)表紙は写真でありもはやイラストとは無関係である。私は興味のなさといたたまれなさで早くここから脱出したかったが早足で立ち去るのはすぐそばにいる作者に悪いような気がして商品を眺めるふりをしながらじりじりと奥のショップ方に足を進めた。
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異母妹

単身赴任している父親が帰ってきて私と弟に話があると言う。何かと思えば実は父はもうずいぶん長いこと浮気をしていて私には腹違いの妹がいるのだそうだ。年齢は丁度私と弟の中間で(だから弟にとっては異母姉だ)大人しい性格で自分の立場をよく理解しているという。突然の告白にひどく驚いたが私は会ったことのない異母妹をなんとなくいとおしく想い父のこともあっさり赦した。しかし父はまだまごついているので何かと問い詰めると実はきょうだいは他にもいるのだという。嫌な予感を覚えつつ「何人くらい?」と聞くと父は「わからない..けど、10人くらい」と返した(実際にはもう少しいそうな口ぶりであった)。私はこれにはさすがに呆れてしまって父に怒る気すら起きなかった。
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猥褻(一部明晰夢)

(一)

不快な男に手を握られる,これは夢だ,もう目醒めよう,離脱。ひやりとした感触が両腕に残っている。




(二)

時間が来たので田舎の個室カラオケ風のその店を出ることにした。丁度部屋の出入口の前に母が車を停めていたので私は濡れた身体をほとんど拭かずモスグリーンのバスタオルで前を隠しただけの格好で急いでトランクに乗り込んだ(服は車の中で着たっていい,深夜だし誰も周りには居ないだろうと踏んだのだ。実際そうだった)。リアウィンドウから真夜中の田園風景を眺めていると私たちの車と反対方向に走る自転車とすれ違った。自転車は男の二人乗りで後ろに乗っている奴がこちらを振り返って凝視している。しかし見つめ返しても目が合うことがないので私はようやく男の角度からだと左の乳房が丸見えであることに気づいた。慌ててバスタオルの位置をずらしたが奴はまだ目を逸らさないのでこれはもう駄目だろうと諦めた。男はようやく私の視線に気づいたようでちょっとニヤついた笑みを投げかけてきたのでこちらも演技っぽく顔をしかめてみせた。自転車は遠ざかっていった。




(三)

ここのところ近所で飼われているらしい柴風の犬が窓の外に姿を見せるので見かけたら窓を開けて撫でたりしてやっていた。その日もまた来たのでいつも通り可愛がってやっていると何か紙をくわえていることに気がついた。広げてみると同人誌即売会などでしばしば配布される「ペーパー」というやつでどう見ても私宛てととれるようなメッセージも書いてあった。いったい誰が何の目的で? 名字は「山田」のようだがペンネームの可能性もある。薄気味悪く感じている私の横で犬は相変わらず可愛らしくしっぽを振っている。
アルバイト先の店長に相談すると恐らくここのバイトの人だろうという答えが返ってきた。確かに山田という名字の人はいるが男性であり(ペーパーを書いたのは女に思えた)女性メンバーも私と顔見知りの数人の中にしっくりくる人はいなかった。店長は正体を知っている風な口ぶりだったがそもそもこの店の人間なのかも疑わしい。




(四)

事務所には私と数人の女性社員,それに男性社員X,Yが居る。私は信頼している方の男性社員Xとシフトについての話をしているがこの話が終わったら彼は部屋を出ていってしまう。私は社員Yからしばしばセクハラ紛いの行為を受けているがさすがに上司の目前では気が引けるのかXが同室に居ればYは何もしてこないのだ。心の中でXが事務所に留まってくれるよう祈るも虚しく彼は次の仕事のため室を出ていった。すかさずYが近づいてくる,上手いことかわしたいがそうとはいかず遂にYは私のブラウスの釦を千切って前をはだけさせた(こういう時女性社員は全員関わりたくないとばかりにこちらに見向きもしない。これには本当にうんざりする)。さすがに慌てて室の外に出たがすぐに後ろから抱き着かれてしまった。「いやーーー誰かたすけてーーー犯されるーーー」私はお手本のような正確な発音と良く通る声で叫んだ。心の底では意外と冷静であった。きっと誰か助けてくれるだろう。
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空想学園(7)

ここのところ校内では事件が続いている。そのほとんどが教師など内部の人間による犯行で,特に私と同じクラスの鹿目まどかという生徒を狙ったものが多いのでいつもヒヤヒヤしながら授業を受けている。社会の授業が終わり胸を撫で下ろしていると入れ替わりに次の授業の教師が入ってきた。授業開始早々教師は鹿目まどかに因縁をつけ教室内は水を打ったように静かになり不穏な雰囲気が漂い始めた。まどかは慣れた手つきで携帯電話を取り出しその場で警察に電話をかけた。てっきりこの教師のことを報告するのかと思いきや話し始めたのは先ほどの社会教師のことだった。何でも授業中に爆破予告を織り混ぜていたらしいが私を含む他の生徒はまったく気づかなかった(狙われ慣れていると敏感に察知できるようになるのだろう。電話中の落ち着いた態度といい,教師を一度逃がして油断させてから通報する手口といい,最早只者ではない感じがする)。すぐに数人の警官が飛んできて(この辺りの警察は有能だ)まだ廊下にいた社会教師とついでに教室内の教師も取り押さえ,私たち生徒を校庭に逃がした。クラスメイト(全員女である)はきゃいきゃい騒ぎながら教室を出ていったが,私は学生鞄の他にサブバッグとして使っているcherのピンクのトートバッグ,その他全ての鞄を持って一番最後に教室を出た。
玄関の靴箱のところで同じクラスの大人しい子と出会したので声をかけたらベラベラと喋られて少し困った。慌てて逃げていく子もいたが私や彼女のように悠長に構えている生徒も少なくはない(慣れっこなのだ。私たちも)。空は灰色で校庭には雨が降っていた。







寮に戻った私はすぐに男子寮の猪たちのいる部屋に向かった。一応は事件があったわけだし今日はこの部屋に泊めてもらうことにした。女の子が男子部屋に泊まるのはかなり問題がありそうだがバレないようにだけ気をつけてあまり考えないようにした。パジャマを教室に忘れたことに気づき面倒だが取りに戻ることにした(やっぱり味気ないパジャマよりあの花柄の可愛いのが良い。別に何を期待しているわけでもないが)。
校内の中層はJRの駅と連結しており夜でも電灯が煌々としているがさすがに人の姿は見えなかった。嫌になるほど長いエスカレーターをいくつも上り教室へ向かう(教室から寮へ行くときはここを下りるのだ。いったい一日に何度ここを行き来しているだろう)。教室のあるフロアは廊下は灯りがついていたが室内はどこも真っ暗でやっぱり誰もいなかった。そういえば教室の鍵は閉まっているだろうか。
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寝過ごす

目が覚めると辺りが薄暗い,この感覚は久しぶりだ。時計を確認すると16時を回っており15時からのバイトには完全に遅刻である。携帯電話には着信はないようだがまさか私の遅刻に誰も気づいていないということはなかろう。私は飛び起きて洗面所に駆け込み大急ぎで化粧を始めた。遅刻するときに悠長に化粧をするのはいかがなものかといつも思うのだがすっぴんで行くのはさっきまで寝ていましたと言っているような気がして引けるから用事が長引いて遅刻したということにしようか,私は短時間にそこまで頭を巡らした。DSiを開くとカメラを通してスクリーンが鏡代わりになる。タッチペンでアイシャドウの色を選択して瞼に乗せていると(ピンクを選んだが少し腫れぼったく見える)弟が髪をセットしにやって来て狭い洗面台を二人で使うことになってしまった。苛つきを感じつつも昔からの癖で遅刻が確定しているときはなぜかあまり急ぐ気にならない。私は弟と短い言葉のやりとりをしながらゆっくりと化粧をした。
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空想学園(5)

後輩のミキと学園祭に行く。坂道の左右に様々な出店が立ち並び通路は人で溢れかえっている。沖縄のものを扱っているという薄暗い小屋に入ってみたが中身はどう見ても朝鮮系である。私はなんとなく怖くなりすぐに出てきたがミキがなかなか出てこない。出口の前には苑子が立っており瞬きもせずに小屋の中を凝視していた(私と同じように連れが出てくるのを待っているのだろう)。しばらくしてミキは満足げな顔をして帰ってきた。なんでも中で沖縄風のエステを施してもらったという(オイルでてかてかに光った二の腕はさっきよりかなり逞しくなったように見える)。「いいなー私もやってもらえばよかった」と言いつつやはりあそこにはあまり入りたくない。
未だ小屋を見つめている苑子に結局声をかけず私たちは坂を下った。




それからミキを助手席に乗せ車で私のアパートの方へ向かった。左手に山が聳えるカーブの道を少し飛ばして走る。ミキは行きたい場所があるらしくぼそぼそと呟くがなにやら遠回しな言い方でよく理解できない。焦りを感じつつ聞き返すと「だからぁ……ダイソーです」と漸くはっきり行ってくれたがダイソーなら丁度今通りすぎたところである。私はしまったと思ったがミキにそれを悟られないように余裕ぶって「この先にあるから」と言った。車は私のアパートを通りすぎる……,途中でマルに運転を変わってもらい私が助手席に座った。左折して山道に入る,この辺りにも目当ての店があった気がするが見つからず私の焦りは募るばかりである。幾分か進んだところでマルはビルの中層に車ごと突っ込んで停車させた。ガラス張りの美しいビルの1フロアに軽自動車が鎮座している様は中々シュールであった。私たちは笑いながら車を降りた。
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