2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

遅刻

目が覚めるとすでに11時をまわっており二限に遅刻するのは確定だった。木曜日の二限はマットレスの敷かれた部屋のある小さなプレハブ小屋で行われる。でもその前にパソコン室に寄って置き忘れたままのフランス語の教科書を取り返さなくてはならない。 パソコ…

親族の死

親族の死は赤い電話越しに無機質な声で告げられた。きっと病床の祖父だろうと覚悟して受話器を取ったが,意外にも亡くなったのは父だった。原因は高血圧でまだ本当に死亡したのか確認がとれていないという。これでは実家に帰ることもできない。私はひどく動…

ボート

マンションは海に面しておりベランダからの景色はまるでこの建物が海の中に建っているかのように錯覚させる。ひどい嵐で波は大荒れだが空は無言で白いままの曇り空である。海を挟むように左にテーマパークのボート乗り場,右に漁港があり,その間でたくさん…

万引き

M駅北口の商店街の中を路線バスがおそろしくゆっくりと走っている。どうやらこのバスはギネスに挑戦しているらしいが何で勝負しているのかは定かではない。内装は山手線に似ていて人はまばらである。バスは雑貨屋の前を通り過ぎた。この雑貨屋には私が以前か…

ザク君

小さな教室で軽音楽サークルの内輪ライヴが行われている。窓には暗幕も張られておらずあたたかい光が部屋に満ちている。一発目はピロウズのコピーバンドで,前のバイト先の先輩だったザク君がドラムをつとめていた。ボーカルは甘い声の小さな女の子でギター…

ヒッピーの祭典

図書館のようなクルミ材の壁の教室の後ろのほうで猪が講義を受けている。私がこっそり話しかけに行くと猪はいつもにまして優しく恋人のような扱いを受けた。笑顔は木漏れ日である。その優しさがくすぐったくもあり同時に少し不気味でもあった。マンションの…

ガソリンスタンドの敷地内にある古くて細長いマンションに住んでいる。外に出る階段を下りたところにきれいなウェルシュ・コーギーが捨てられていたので飼うことにした。実家で飼っている犬に似ていたが,やや細く,子供っぽい性格で,ちょっと耳が丸かった…